「アンチ・ディープインパクト」
2006年12月20日 時の競馬列伝四年前、ワールドカップの時にサッカー部の友達が言っていました。
「サッカーのことを何も知らないくせに、ベッカムベッカムと騒がないでほしい」
私の軽い一言に対する、彼の熱い反応だったのですが、
当時なぜ彼がそこまで世間に憤慨しているのかは全く分かりませんでした。
でも今はよく分かります。
サッカーを競馬、ベッカムをディープに置き換えた状況がこのニ年ずっと続いたからです。
私も今、彼と同じく怒っています。
でも誰かに対して怒っているわけではありません。
第一に『ディープインパクト』。
馬は走り続けるために生まれてきた動物です。
走り続けようとするので、脚が一本でも治らなくなるとすぐ安楽死処分になります。
そんな命がけの彼に怒れるはずもありません。
第二に『ディープインパクト』に熱狂している人たち。
私の観測では彼らの多くが競馬の真意について知らない人たちだと思います。
ここでいう真意というのは、
「本当はあの馬はそんなに大した相手を負かしていないんだ」とか、
「本当はもっと競馬には他に面白いことがあるんだ」とか、そういう事なのですが、
そういう事を知らない上で純粋に楽しんでいる方達に、怒れるはずもありません。
最後にマスコミ、負けようと、違反しようと、疑惑を持とうと、
最後まで『ディープインパクト』を絶対的金字塔と形容し続けたあのマスコミ。
しかしこの不景気に、彼らが世間の士気を下げる行動を起こす方が不気味です。
そんな彼らにも怒れるはずがありません。
結局、誰にも怒れないから怒っていたのです。
燃える憎悪を抱え、冷めた眼球を通し、私はこの二年間、愛する競馬を眺めてきました。
でももうそんな苦痛からもようやく解放されます。
本当に疲れました。
熱に侵された現実にも、仮想に浸かった世間にも、こういう醜い自分にも、
私はもう疲れました。
本当は私は待っていました。
疑念の渦に沈んでいく自分を、いつの日か真実の力で魅了し、救い出してくれる時を。
しかし彼は最後まで私を納得させないまま、日曜日ターフを去ります。
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