【時の音楽論 二、小室哲哉(後)】
2007年1月20日 時の競馬列伝「栄華と滅亡の遺産(後)」
もう一度。
私は小室哲哉を日本史上最高の音楽家であると信じています。
彼のどこが凄いのか。
すべてです、プロデューサーとして求められるもの全てだと思っています。
まず、詞。
小室哲哉の詞というと明るく夢のある詞というイメージですが、
彼はちゃんとその裏にある闇の部分も丁寧に描いています。
しかし、驚くことに彼が重視していたのは歌詞の質ではありません。
彼自らが「詞は曲に当てはめるアクセサリーとして考えている」と発言しているように、
よく聞いてみると「確かにこの曲調にこの趣旨の文章は合っている」と、
こちらを納得させるほど見事に彼はアクセサリーを散りばめているのが分かります。
次に、販売戦略。
歌手の浮き沈みが激しい音楽業界において彼が取ったのは
「人気に陰りが見えたら即、次のアーティストに乗り換える」という手法でした。
具体的に並べると「TRF→華原朋美→安室奈美恵→globe→鈴木亜美」の順でしょうか。
これに対しては「残酷だ」との声が世間から上がっていましたが、そうでしょうか。
私は何て頭のいい人だろうと心から感動していた記憶があります。
最後に歌。
しかし、これに関してだけは言葉で伝えることができません。
形にできない。
それこそが歌の最大の魅力であり、
彼の名声があっという間に忘れ去られた原因かもしれません。
しかしメロディは耳に残ります、もう一度、耳をすませて聞いてみて下さい。
彼の作った音はまだ、皆さんの心に、かすかな記憶として残っているかもしれませんよ?
見果てぬ大地、マストにたくして、目指すよ南の ISLAND
雲の切れ間、波しぶきの向こう、かすかにのぞくよ ISLAND
壊れる都会、すべてのモラル、光のシャワーで洗い流せ
風と泳ぐよ、空と踊るよ、いつもそばにいてほしい
海を突き抜け、胸に飛び込む、真夏の恋よ輝け
―「ISLAND ON YOUR MIND」
彼が表舞台を去ったとき、私は当然の摂理として、次の代役が現れるものとばかり思っていました。
しかしそれから十年が経つ今も、日本の音楽シーンは衰退を続ける一方です。
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