「イースト・フロム・ウエスト」
 

東京へと向かう新幹線の中は出張を控えたビジネスマンで混み合っていた。
この平日の新幹線の中には社会で地位を築いた者が集うというイメージがある。
夜行バスで見かけるような左右を知らぬ若者とは決して遭遇しない。
 
ある俳優がテレビ番組で、初めて上京した際に、
新幹線の中で聞いていた歌を今も大切にしているという話を聞いた事がある。
私も何かを記念に残してもよかったが、
浮かんでくるのはたださっき捨ててきた町の事ばかりである。
瞳はなぜ見送りに来たのだろうかと考えていた。
彼女なりに秘めた想いがあったのか、それとも、
一人町を去っていく私を哀れに思ってくれたのだろうか。
最後の輝きを放つ夙川を背に微笑む彼女の姿が忘れられない。
 
きっと、これからも思い出を重ねて生きていく。
東京に行き、私の心はさらに汚れ、今より闇に侵されるかもしれない。
それでも歩みを続けていく、自分の信じた道だから。

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