<イーストロード11>
2008年4月9日 時の小説(旧)「イースト・ティアー」
また韓国語を話す女の声で目を覚ます。
あまり間の悪いところで起こされると、そのまま布団の中で思慮にふける事がある。
今日考えていたのは昔、飼っていた猫の事だ。
名はミミと言う。
だがその猫に関しては、四枚の絵でしか思い出す事ができない。
なぜなら私がその猫に出会ったのは四歳の時であり、別れたのも四歳の時だった。
思い出したのはこの十八年の間で初めてだ、理由は分からない。
一枚目は父と姉が朝早く、野良猫にエサをやっているシーン。
その日、初めてミミは家に来た。
二枚目はミミが家の台所に大量の糞をして父に追いかけられているシーン。
父は憤慨していたが、私にとっては野良猫を甘く見た父の幼さを象徴するシーンだ。
三枚目はミミがかつお節ごはんを美味しそうに食べているシーン。
そして最後は母と姉が泣いているシーンで終わる。
近くの路上でミミが死んでいるのを見つけ、母が連れて帰ってきたのだ。
その日、初めて私は家族が泣くところを見た。
なぜ泣いているのか分からない、なぜ逃げ出したいのかも分からない。
ただ一つ分かるのは、それ以降、私が人の前では決して泣かなくなった事だ。
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