「イースト・シュライン」

美穂と赤坂で食事する。
和菓子に雑貨、散々ねだられた挙句、
日枝神社の前を通りかかったところで突然、美穂が参拝をしたいと言い出した。
最近、あまりにも不運な事が立て続けに起こるので、
ちょっとでも食い止めたいという彼女の理由にうなずいて、本堂へ向かう。
狭い参道には様々な店、企業、ホテルなどの名称が書かれた旗が並んでいた。
いかに富と権力を得ようと、神たる存在には絶対勝てないという証なのだろうか。

立派な神社だった。
神などというものは決して存在しないと信じている者からすれば、
ため息が出るくらい立派な神社だった。
本堂の前に着き、美穂と並んで手をあわせる。
こうして神を敬う気持ちなど全くなしに、
自分の幸福だけをただ祈りに来た人間はどれだけいたのだろうと思い、手を合わせる。
帰り際におみくじを引く。

「幸運:上昇一途  病気:なおる  願望:早く叶う  商売:成功する」

大吉と書かれたみくじには、未来を祝福する言葉がただ延々と並んでいた。
まるでこの先、何の努力をせずとも幸福は約束されていると書かれているかのように。

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