「イースト・フェイト」

高倉と新橋で食事する。
電車の振動で机が揺れる古い居酒屋だった。
昔の話、馬の話、一通り話し終えたところで高倉が一つ悩みを打ち明け始めた。
それは、ある女性との結婚を考えていた矢先に運命的な出会いをしたという話だった。
恋の話は苦手だ。
自らの助言が他人の運命を動かすと思うと、歯切れが悪い。
だが、おそらくは長年付き合ったその女性と結婚するだろうという事だった。
思えばこの男の誠実な一面は、出会った頃から全く変化していないのだと思った。

神は恐ろしい。
理性と本能という共存しえない両者を人に与えた。
神は恐ろしい。
誠実な者ほどより多くの誘惑が集まるよう人に仕向けた。

最後に気になる情報を一つ聞いた。
夙川の理花が先日、交際していた男と別れたのだという。
「結婚するかもしれない」と自慢げに話していた、あの医者だ。

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