「イーストロード37」
2012年10月3日 時の小説・2012~「イースト・ダウト」
高倉と代官山で会う。
いつも通り、二人とも約束の時間より遅れた。
去年、結婚式を挙げた高倉だが、式には行かなかった。
当時トラブルの真っ只中だった理花が欠席を表明したため、
高倉が二人以外に知り合いがいない私に参加を遠慮させてくれたのだ。
今日はいわばその埋め合わせの祝いをするために集った。
以前は二人でよくショップを回ったものだったが、この日は軽く食事しただけだった。
今やショップにある服は全てインターネットに掲載されているため、回る必要がないのだ。
何となく、この街もかつての賑わいを失ったように見える。
食事代はおごる予定だったが、先月ようやく就職していた私の祝いも込めて、
この日は割り勘になった。
高倉が結婚した理由は「妊娠」だった。
昔、お互いにそれだけは避けようと笑いながら約束した事があったと私が言うと、
彼は「約束は守っていたんだが」と少し神妙な面持ちで言った。
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