「イースト・フレンド」

コンタクトレンズを家に忘れる。
すでに装着済みだが、明日の分がない。
時刻はすでに夜の十一時だったが、これは電車で帰るしかないと悟る。
バスルームの外に立ち、やはり今日は帰ると大声で伝える。
すると中にいる佐和子が「一緒にお風呂、入ろう」と言う。

無視してカバンに服や髭剃りを詰めている私に、
「保存液買いなさいよ、別に失明するわけじゃないし」
とバスルームから顔をのぞかせて佐和子が言う。
相変わらず冷淡だなと思う。
仕事のつてで知り合った女だが、彼女の心は常に静かな支配欲に満ちている。
「ねえ入ろう」とまた言われる。
もう今日は用を済ませているのに、なぜ入ろうと誘うのかと思った。

無言で携帯電話を確認している私に、
「いつも頻繁にメール見てるけど何で?」「誰かから連絡待ってるの?」
としつこく詮索される。
「仕事」とだけ言って部屋を出る。

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