「イーストロード48」
2012年12月12日 時の小説・2012~「イースト・フューネラル」
祖母が死んだ。
祖母は権力者だった。
その恐ろしいほどの直情的な独占欲は、ありとあらゆる者たちを遠ざけた。
それは友人はおろか、子供、孫たちもだった。
そして最後に一人だけ残ったのが私だった。
私は祖母の他人への恨み辛みをいつも黙って聞くフリをして、可愛がられていた。
祖母が息を引き取る直前、
息子たちが交わしていた会話の話題は葬儀の段取りだった。
私の目には、
祖母の心臓はその会話を聞いた事によって止まったようにしか見えなかった。
葬儀では何人かの親族が涙を流していた。
だが私の目には、
その涙は悲しみではなく悲しげな空気によって造り出されたようにしか見えなかった。
この罪深い者どもの偽りの涙だけが、淡々と進む葬儀を静かに彩っていく。
だがこれも、祖母自身が作り出した「結末」なのかもしれない。
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