「職員Tの話(前編)」
この人が父親だったら少しは故郷に帰るかもしれない。
そう思っていた人がいた。
Tは早朝、私が寝る前にテレビに現れる人だった。
男に「可愛い」という印象を覚えたのは初めてだった。
私は男性に「可愛さ」を求めてはいないし、そういう男性を求めている人も少ない。
しかし過去に可愛い男性を見た事はある。
だがそういう人間は大体、
本来の醜い自分を隠すために可愛さを偽装している者ばかりだった。
だがTは違った、彼は生粋の可愛さを持っていた、赤ん坊のようなとでも言うべきか。
しかしある日、全てが崩れた。
PCを立ち上げると「某局の職員を痴漢で逮捕」という見出しが目に入った。
久々にマスコミが喜びそうなネタが入ったなと思い、
その記事にカーソルを合わせた時にふと思った。
「Tではないか」と。
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